ISSN: 2155-9880
後田 真一
背景:心房細動(AF)および心不全(HF)患者に対する第一選択薬物療法としてβ遮断薬の使用が推奨されているにもかかわらず、これらの患者におけるβ遮断薬に対する心室収縮反応については未だほとんどわかっていない。本研究では、心室収縮機能と密接に関連するフランク・スターリング機構(FSM)、機械的復元(MR)、および期外収縮後増強(PESP)という心室収縮メカニズムに対するβ遮断薬の効果を、駆出率が保持された(HFpEF)AF患者と駆出率が低下した(HFrEF)AF患者で調査した。
方法: 20人のAF患者を、駆出率に基づいてHFpEF群(駆出率≥ 50%、n=14)とHFrEF群(駆出率<40%、n=6)の2つのグループに分けた。インピーダンス心電図法を用いて、β遮断薬投与後およびベースラインでの大動脈血流のピーク速度を表す (dZ/dt) min 値を y 軸に、前回の RR 間隔 (RR1) または RR1/前々回の RR 間隔 (RR2) 比値を x 軸に適用することにより、FSM-MR グラフおよび PESP グラフを HFpEF の AF 患者と HFrEF 患者で作成した。
結果: β遮断薬投与により、HFpEF の AF 患者 (ρ=0.88、P<0.001) では (dZ/dt) min 値の中央値の増加率が FSM-MR の関数として RR1 の中央値の増加率と有意な正の相関を示したのに対し、HFrEF の AF 患者では (ρ=−0.43、P=0.40) 有意な正の相関を示した。 PESP の効果の程度を表す PESP 指数値は、β 遮断薬の投与後、両グループで同様に有意に減少しました。HFpEF を伴う AF 患者 (ベースライン: 中央値 5.9 [四分位範囲 (IQR) 2.0-16.9] vs. β 遮断薬投与後: 中央値 1.6 [IQR 0.62-7.2]; P = 0.023)、および HFrEF を伴う AF 患者 (ベースライン: 中央値 6.6 [IQR 0.66-22.6] vs. β 遮断薬投与後: 中央値 1.2 [IQR 0.06-15.1]; P = 0.028)。
結論: AF の心室収縮メカニズムの観点から、β 遮断薬は HFpEF を伴う AF 患者のフランク・スターリング機構と機械的復元に有効である可能性がありますが、HFrEF 患者には有効ではありません。