ISSN: 2167-7700
竹内信宏、野村祐輔、飯田正人、山本健人、高田正典、前田哲夫、大塚明人、多田英利、中村正、市原喜久男、那波一義
82歳の女性が軽度の呼吸困難を主訴に当院を受診した。既往歴には、78歳の時に冠動脈ステント留置による治療を受けた労作性狭心症、酸素吸入と利尿剤投与で改善したうっ血性心不全がある。胸部X線検査では、左肺門病変レベルでリンパ節腫脹の証拠が明らかになった。造影胸部コンピュータ断層撮影では、肺門病変部位の腫瘤が左肺動脈と左下肺静脈に広がり、左肺門病変近位と両側縦隔のリンパ節腫脹、および胸膜播種が明らかになった。気管支鏡検査では、左上気管支幹のほぼ完全な閉塞が明らかになった。生検標本により小細胞肺癌(SCLC)の診断が確定した。進行SCLCに対する標準的な化学療法はシスプラチン(CDDP)とエトポシド(ETP)の併用療法であるが、慢性心不全および腎不全を有する患者にはその療法は耐えられないと判断された。そのため、塩酸アムルビシン(AMR)単独療法のレジメンが決定された。化学療法の1サイクル後、腫瘍は著しく縮小した。軽度の消化器症状(吐き気、食欲不振など)および軽度の骨髄抑制があったにもかかわらず、患者はAMR単独療法で良好な忍容性を示した。患者は肺炎を発症するまで、化学療法の5サイクル目の間、部分奏効を維持していた。