ISSN: 2155-6148
酒井渉*、平田直行、山影道明
背景と目的:心臓手術後の急性腎障害 (AKI) は重篤な合併症であり、術後死亡の危険因子である。アンジオテンシン II 受容体拮抗薬 (ARB) とアンジオテンシン変換酵素阻害剤 (ACE-Is) は、心臓手術後の術後 AKI の発生率を低下させることができる可能性が示唆されている。しかし、これらの薬剤のどちらが心臓手術後の腎機能を保護するのに優れているかは不明である。我々は、ARB と ACE-Is はそれぞれ異なる薬効のため、心臓手術後の術後 AKI に異なる影響を与える可能性があるという仮説を立てた。そこで、この最新の研究では、ARB または ACE-Is と心臓手術後の術後 AKI との関連性を調査した。
方法:この後ろ向き単施設観察研究は、地域の病院で実施された。この研究では、2013年1月から2015年12月の間に人工心肺を用いた心臓手術を受けた132人の患者を調査した。AKIの発生率とARBまたはACE-Iの使用との関連性は、傾向スコア逆確率治療重み付け(IPTW)法を使用して分析された。
結果:調整後の多重ロジスティック回帰分析により、調査した132人の患者のうち、術前にARBを投与された患者は、他の患者と比較して術後AKIの発生率が有意に低かったことが明らかになった(オッズ比[OR]、0.33、95%信頼区間[CI]、0.11-0.94、P = 0.040)。しかし、ACE-Iの術前投与は、術後AKIの発生率と関連していなかった(OR、0.73、95%CI、0.25-2.17、P = 0.58)。
結論:我々の分析では、周術期の腎保護には ACE-I よりも ARB の方が望ましい薬剤である可能性があることが示された。心臓手術後の腎臓に対する ARB と ACE-I の詳細な影響を明らかにするためには、前向き研究を実施する必要がある。