ISSN: 2379-1764
諸富貴彦、田畑康彦、北村千秋
歯髄は歯の維持に重要な役割を果たしていることは広く認められています。う蝕や歯の破折などにより歯髄が炎症を起こすと、激しい痛みを伴うことがあります。その痛みから解放するために、歯科医は歯髄をすべて除去する歯髄切除術をしばしば行います。歯髄切除後、生存歯髄を失った歯は防御能力を失い、外的刺激に対して脆弱になります。歯髄切除前に残存歯髄から象牙質歯髄複合体を局所的に再生する治療法を確立すれば、歯髄の機能を温存する上で有益です。私たちは、歯髄切断後に象牙質歯髄複合体の再生を誘導する新しい治療法の開発に取り組んでいます。この方法では、外因性に成長因子と足場を供給し、歯根管内の残存歯髄から細胞と血管を誘導します。残存歯根歯髄の壊死を招かない歯髄切断法の確立も、象牙質歯髄複合体の局所再生療法には不可欠です。このミニレビューでは、象牙質歯髄複合体の局所再生療法に向けた私たちの研究戦略を示します。