ISSN: 2168-9857
加賀完也、荒木和博、金坂真登、杉浦正博、極真保、増田寛、小島聡子、納谷幸男
抽象的な
目的:ピオグリタゾンによる膀胱癌のリスクを調査するために、帝京千葉医療センターで治療を受けた糖尿病患者のデータを遡及的に分析した。
方法: 2009年2月から2011年10月までに帝京大学ちば医療センターでピオグリタゾンによる治療を受けた患者は720名、ピオグリタゾンによる治療を受けなかった患者は742名であった。これらの患者における2009年2月から2013年12月までの新規膀胱癌診断数と、2型糖尿病患者における膀胱癌の発生状況を特定した。糖尿病罹病期間、性別、年齢、喫煙、糖尿病治療薬は診療記録から得た。膀胱癌の発生は、ピオグリタゾン開始後の発症例と定義した。統計的有意差はフィッシャーの正確検定によって分析した。
結果:糖尿病患者の約2%に膀胱がんがみられた。膀胱がんの発症率は、ピオグリタゾン群(15/720、2.0%)と非ピオグリタゾン群(14/742、1.9%)で差がなかった。経口糖尿病薬は膀胱がんのリスクと関連していなかった。しかし、インスリンの使用は膀胱がんのリスクと有意に関連しており(ハザード比[HR]:2.83、95%信頼区間[CI]:1.15〜6.84、p = 0.0246)、性別も膀胱がんと有意に関連していた(HR:6.001、95%CI:1.397〜43.06、p = 0.0137)。糖尿病の持続期間と喫煙は膀胱がんのリスクと関連していなかった。
結論:この研究では、ピオグリタゾンの使用は膀胱がんのリスクと関連していなかったが、インスリンの使用は膀胱がんのリスクと関連していた。