ISSN: 2155-6148
西山淳一、高橋麻紀、安藤亜紀、澤田誠、菅拓儀、鈴木敏康
2011年の東日本大震災は日本に未曾有の被害をもたらし、原子力発電所の安全神話を打ち砕いた。日本の電力は未だに完全には復旧していない。停電により手術室の空調が停止すると、室温や湿度の調整が難しくなり、空気清浄フィルターによる換気も停止する。本研究では、空調停止による手術室環境の変化に及ぼす影響をシミュレーションで検討した。LED無影灯とキセノンガスランプを設置した2つの部屋を用意し、空調を停止し、手術台上と部屋全体の温度、湿度、空気清浄度の変化を測定した。また、各部屋で働くスタッフ4名による体感温度の測定も行った。結果、空調停止後、手術台上の温度はLED室で11.8℃、キセノンガス室で26.2℃上昇し、両室の全体温度は2~3℃上昇した。両室とも手術台の湿度は低下したものの、部屋全体では両室とも10~12%上昇した。スタッフの身体的印象については、LED室では半数が作業中に暑さを訴え、キセノンガス室では全員が作業に影響する蒸し暑さを訴えた。LED室とキセノンガス室では、空調停止後それぞれ8分と22分以内に空気清浄度が規定レベルを超えた。その後も粒子は増加し続け、両室とも35,000/ft3を超えた。これらの結果は、手術室の空調停止が作業環境を急速に悪化させ、手術部位感染のリスクを高めることを証明している。