ISSN: 2155-9880
滝村秀幸、村松俊哉、伊藤嘉明、酒井剛、平野啓介、山脇正博、荒木元春、小林紀洋、坂本康成、森信介、堤正和、高間拓郎、高藤寛也、本田陽介、徳田高広、牧野健司
急性非代償性心不全(ADHF)の治療において、ヒト心房性ナトリウム利尿ペプチドであるカルペリチドと、新規バソプレシン2型受容体拮抗薬であるトルバプタンの併用はこれまで使用されていない。トルバプタンは、ADHF患者の体液量過剰を治療するために新たに開発された薬剤である。2012年4月から10月の間にADHF入院時に治療された102例連続症例のうち、カルペリチドとトルバプタンを投与された51例(トルバプタン+カルペリチド群)とカルペリチドと従来の利尿薬を投与された51例(カルペリチド群)を分析した。両群を比較すると、トルバプタン+カルペリチド群の48時間におけるカルペリチドの総投与量およびループ利尿薬の投与量は、カルペリチド群よりも低かった(ともにp<0.001)。入院後24時間および48時間の尿量は、トルバプタン+カルペリチド群ではカルペリチド群よりも有意に高かった(それぞれp=0.02およびp<0.001)。NT-pro脳型ナトリウム利尿ペプチド値の変化は、トルバプタン+カルペリチド群ではカルペリチド群よりも有意に高かった(p=0.01)。腎機能の悪化には有意差は認められなかった。結論として、ADHF治療において、トルバプタンとカルペリチドの併用は、従来の治療と比較してより効果的かつ安全であった。