ISSN: 2329-9096
川村民平と森岡シュウ
本研究では、ワーキングメモリ(WM)容量の低下と注意機能の低下が認められた場合の語流暢性機能について検討した。WM容量の低下が認められた注意障害患者14名と健常者28名に、日本語版リーディングスパンテスト(RST)と3種(カテゴリー、文字、動詞)の語流暢性課題(WFT)を課した。WFTは、各条件で制限時間60秒で4試行実施した。WFTで生成された語数を群間で比較し、日本語版RSTで正しく語を想起した割合と各WFTで生成された語数の相関係数を算出した。群間の生成語数の比較では、3条件すべてにおいて健常者の方が有意に語数が多かった。正しく語を想起した割合と生成語数の相関については、健常者では3条件、注意障害患者ではカテゴリーと動詞の条件で正の相関が認められた。これらの結果は、WM容量の違いが注意障害患者の語流暢性機能に影響を及ぼすことを示している。また、注意障害患者の流暢性機能の評価バッテリーとして文字流暢性課題を使用する場合、流暢性とWM機能の関係を十分に考慮する必要があることを示している。