ISSN: 2167-0870
白神和代、小原信行、荻原卓夫*
糖尿病は、心筋梗塞や脳梗塞、網膜症、腎症、神経障害などの合併症のリスクを高めることが知られています。糖尿病患者は、血糖値(Glu)の急激な上昇を抑えるために、ゆっくり食べる、食べ過ぎを避ける、野菜の摂取を増やすなど、食生活を改善することが重要です。一方、褐藻類由来の多糖類であるアルギン酸(Alg)は、血中コレステロール低下作用や胃粘膜保護作用などから、食品添加物、健康食品、医薬品として利用されています。最近、アルギン酸カルシウム(Ca-Alg)に血中Glu上昇を抑制する薬理作用があることが報告されました。この効果のメカニズムを調べたところ、Ca-Alg はマルトースをグルコースに分解する α-グルコシダーゼの活性を阻害することで、消化管でのデンプンの代謝を阻害することが分かりました。また、ラットの食後血中グルコース上昇に対する、餌に添加した Ca-Alg の量と Ca-Alg の粒子サイズの影響も調べました。その後、いくつかの臨床試験を実施しました。健康な成人に Ca-Alg を添加したうどん、そば、中華麺を食べさせ、摂取後の血中グルコース濃度を測定した結果、いずれの場合も Ca-Alg は血中グルコース濃度を低下させ、グルコースの総吸収を抑制しました。このレビューでは、Ca-Alg の食後血中グルコース上昇に対する効果に関する基礎研究と臨床研究の結果をまとめています。