ISSN: 2161-0932
小池栄治、小谷康、飛梅貴子、辻功、中井英勝、浮田雅世、鈴木亜矢子、梅本雅彦、塩田満、万代正樹
単純腹腔鏡下子宮摘出術には、腹腔鏡補助下腟式子宮摘出術(LAVH)と腹腔鏡下全摘出術(TLH)の2つの主要な手術法がある。LAVHとTLHを直接比較した報告はそれほど多くない。当施設でも良性病変に対してLAVHは日常的に行われていた。最近、LAVHの代替としてTLHの導入を試みている。LAVHが主流であった施設でのTLH導入に特有のリスクがあるかどうかを調べるために、最初に導入された23例を過去に行われたLAVH手術と後ろ向きに比較した。2007年1月から2013年6月までに当施設で行われたLAVH計246例を、最初に行われたTLH 23例と後ろ向きに比較した。手術時間はTLH群で有意に長かった。手術中の推定出血量もTLH群で有意に低かった。 LAVH群では4例に輸血が必要であったが、TLH群では輸血を必要とした症例はなかった。手術関連合併症はLAVH群で12例に発生し、内訳は腹膜炎3例、膣カフ出血2例、膣カフ膿瘍3例、肺血栓症1例、膀胱膣瘻1例、尿管損傷1例、ポート部位の腸ヘルニア1例であった。TLH群では合併症はなかった。入院期間に有意差はなかった。結論として、症例選択に有意な偏りがあったものの、LAVHの経験が十分な施設ではTLHを安全に導入することは可能である。