ISSN: 2329-9509
川口 浩
本稿では、骨粗鬆症、脊椎後縦靭帯骨化症(OPLL)、骨折治癒といった代表的な骨格変性疾患の分子的背景に関するマウス遺伝学研究をまとめています。欠損マウスを解析することで、骨髄前駆細胞に固有の重要な脂肪形成分子であるPPARγが、加齢性骨粗鬆症に関与していることが示されました。欠損マウスとOPLL患者の研究から、インスリンとインスリン様成長因子-I(IGF-I)は、2つのアダプター分子、インスリン受容体基質(IRS)-1とIRS-2の異なるシグナルのバランスを介して強力な骨同化因子であることが明らかになりました。IRS-1は骨芽細胞の同化および異化機能を上方制御することで骨代謝を維持しますが、IRS-2は異化機能よりも同化機能を優位に保ちます。 IRS-1 は骨折の治癒にも不可欠でした。これらの分子は骨格障害の治療ターゲットとなる可能性があります。