ISSN: 2155-6148
末広耕一、奥谷龍
はじめに:腎不全患者にみられる周術期合併症には、心不全や感染症に対する感受性の増大などのリスクが高い。本稿では、肺切除術を受けた慢性腎不全患者の周術期管理について調査した結果を報告する。
方法:肺癌のため肺切除術を受けた腎不全の血液透析患者21名を対象とした。我々は、彼らの臨床的特徴と周術期管理を後ろ向きに調査した。患者は、術後急性心不全症状の有無の2群に分類され、術前検査と管理について群間比較が行われた。
結果:術前の合併症で最も多かったのは心臓合併症で、発生率は38%と高かった。周術期の重篤な合併症はなかった。対照的に、腎不全に関連する術後合併症は多数あり、急性心不全が3例(14%)、高カリウム血症が2例(9.5%)であった。術前の呼吸機能、術中の輸液量、術前の心臓合併症は、このような患者における術後心不全の潜在的な危険因子であると結論付けた。
結論:周術期死亡例はなかったものの、心不全や高カリウム血症などの術後合併症が発生したため、より厳格な心血管および呼吸管理技術が必要であることが示唆された。