ISSN: 2155-9880
片岡 肇
我々は最近、心不全(HF)の病態生理学に対する「塩化物理論」という統一仮説を提唱した。これは、血清塩化物濃度の変化が、HFの悪化およびその回復における血漿量と神経ホルモン活性の変化の主な決定要因であるというものである。提唱された仮説は、血清塩化物濃度の変化と神経ホルモン系との推測上の相互作用に基づいているが、これらの相互作用が臨床のHF状態に生理学的に適用できるかどうかは不明であった。そこで、本稿では、神経ホルモン系、主にレニン-アンジオテンシン-アルドステロン系と抗利尿ホルモン軸の活性を説明する「塩化物理論」の科学的根拠を示すために、現在の文献をレビューする。発表された多くの臨床研究は、HFの悪化と回復の両方における実際のHF病態生理学における「塩化物理論」を支持している。