ISSN: 2165-7556
稲井拓馬、枝玉睦明、高林智也、久保正義
関節軟骨への機械的ストレスと長時間の立位姿勢は、変形性股関節症進行の危険因子である。本研究では、コンピュータシミュレーションを用いて、立位姿勢における股関節屈曲拘縮と股関節接触力の関係を調べることを目的とする。7つのセグメント(頭部、腕部、体幹(HAT)、大腿部、脛部、両足)で構成される筋骨格モデルを作成した。様々な立位姿勢(708バリエーション)を生成し、5つの股関節屈曲拘縮条件(拘縮ゼロ、屈曲0°、10°、20°、30°)を設定した。筋肉の活動の合計が最小となる股関節屈曲拘縮条件を満たす立位姿勢を最適立位姿勢として求め、最適立位姿勢における股関節接触力を算出した。4つのパラメータ(目的関数、生理学的断面積、力と長さの関係、筋モーメントアーム長)を変化させて感度分析を行った。立位時の股関節接触力と股関節伸展筋力(大殿筋、半腱様筋、半膜様筋、大腿二頭筋長頭の力)は、股関節屈曲拘縮の進行とともに増加した。30°股関節屈曲拘縮のある立位姿勢での股関節接触力は、拘縮のない状態のほぼ2倍であった(それぞれ8.7および3.7 N/kg)。感度分析では、4つのパラメータの変化は主な調査結果に影響を及ぼさないことが示された。本研究の主な調査結果は、立位時の股関節接触力が股関節屈曲拘縮の進行とともに増加するということである。本研究の調査結果は、変形性股関節症の進行を防ぐのに役立つ可能性がある。