ISSN: 2167-0870
静間 徹
目的:特発性細菌性腹膜炎(SBP)はよく研究されているが、肝硬変(LC)患者の細菌性腹水に関する研究はほとんどない。また、LC患者における細菌性腹水と無菌腹水の比較研究もない。そこで我々は、LC患者における細菌性腹水、SBP、無菌腹水の特徴を比較した。
方法:日本で腹水を有するLC患者476人(腹水の臨床検査および細菌培養を含む547回の穿刺処置)において、細菌性腹水、SBP、無菌腹水の特徴を後ろ向きに比較した。結果
:細菌性腹水とSBPの頻度は、それぞれ2.6%(14/545)、6.1%(33/545)であった。腹水中の血清アルブミンおよび総タンパク質濃度は、細菌腹水群の方が無菌腹水群よりも有意に低かった (498/545)。しかし、細菌腹水群と無菌腹水群の間で、Child–Pugh スコア、І 型肝腎症候群 (HRS) の発生率、または短期死亡率に有意差は認められなかった。しかし、これらのパラメーターは SBP 群の方が無菌腹水群よりも有意に高かった。
結論: 細菌腹水患者と無菌腹水患者の間で、基礎にある LC に関連する肝機能障害の重症度と І 型 HRS の発生率に有意差がないと思われるため、短期予後にグループ間で有意差は認められなかった。しかし、SBP は無菌腹水よりも有意に予後不良であった。