ISSN: 2376-0419
藤井 秀、湯川 健、佐藤 秀
目的:これまでの研究で、栄養と運動の面からの生活習慣の改善がメタボリックシンドロームを制御するための最も効果的な手段であることが明らかになっており、この知見は登録された臨床試験の数に反映されている可能性がある。本論文では、この仮説を検証し、肥満に関連する臨床試験の最近の傾向について探索的分析を行うことを目的とする。
デザインと方法:国際臨床試験登録プラットフォーム(ICTRP)に登録されている臨床試験データのうち、肥満患者の1,478のデータセットを分析に使用した(2016年8月時点で利用可能)。
本研究は探索的解析であり、いくつかの仮説を検証し、全体の傾向を明らかにすることを目的とした。対象とした仮説は以下の通りである。肥満患者を対象とした臨床試験のうち、生活習慣の改善による効果を検証することを目的とした臨床試験は年々増加している。
結果:肥満を対象とした臨床試験の割合は年々増加しており、生活習慣介入を用いた臨床試験が増加していることが明らかになった(p<0.05)。国による介入の違いがあるかどうかを調べるためにカイ2乗検定を行ったところ、米国、フランス、オランダでは肥満患者を対象とした臨床試験が比較的多く行われているのに対し、日本、中国、インド、オーストラリア・ニュージーランドでは肥満患者を対象とした臨床試験が比較的少ないことがわかった。BMI25以上の人の割合と肥満患者を対象とした臨床試験の割合の相関係数は0.55であり、中程度の相関が示唆された。
結論:今回の研究では、肥満を対象とした臨床試験により、生活習慣の改善が肥満を抑制する最も効果的な方法であるという研究結果が年々蓄積され、他の臨床試験に比べて相対的に多く実施されていることがわかった。今後、より効果的な方法が発見されれば、他の臨床試験でもその方法が用いられることが多くなるだろう。国別の分析結果では、肥満がより深刻な健康問題となっている国ほど、肥満を対象とした臨床試験が多く実施されている傾向にあることがわかった。